「そう、いいキノコになると本当凄いからやってみなよ。その時なんて、私、凄かったんだから。どんどんどんどん若返っていって、子供になって赤ちゃんになって、最後にはお母さんのお腹の中に戻っていったの。それでそこから更に、もっともっと小さくなって、魚みたいになって、そしてしまいには眩い光の世界が突然現われて、その中に吸い込まれていったの。そうしたら自分の中の何かがスイッチが切り替わるみたいに急に切り替わって、体の感覚が無くなって、自分が生きているのか死んでいるのかも分からない、とても混乱した状態になったのよ。自分の目の前にあるものすら触れることのできないっていう感覚って分かる? 想像してみて。ちょっと怖いでしょ? でもその時は怖くなかったの。全然怖くないの。自分の体の輪郭が無くなって周りの空間に溶け込んで一体化しちゃう感じ。分かる? すっごい気持ちいいのよ。エッチなんて全然比べものにならないぐらい。服とか、自分が身に付けてるものが変に気になって、そう、違和感を感じるの。だから全部脱いじゃって素っ裸になると、本当に自然が私を受け入れてくれているような気がして、凄く感動するのよ。ねぇ、子供がはしゃいでるときって、すぐ服脱いで裸になりたがるでしょう? 多分あれと同じような気持ち良さを感じてるんだと思うの。私、子供達の気持ちがとても良く分かったわ、ああ、自分は祝福されてるんだって。自然は自分のことを受け入れてくれているんだって。もう少しキマッてたら確実に裸で外、走り回ってたわ、きっと。そうでなくても一希が、私が出ていこうとしたりするのを必死で止めてたもん。本当、彼には迷惑かけたわ。あっ、ごめん、私、あの時のこと思い出してたら興奮しちゃって。ちょっとフラッシュバックしてたわ、今。大丈夫? サトシ?」
智はただ呆然とその話を聞いていた。理見には、一希のことで自分に対する後ろめたさは何もないようだった。今の話から察するところ、一希は確実に理見の裸を見ている。もうそのことだけで嫉妬心で頭がフラフラした。一希のことを智はとても羨ましく思った。理見は、自分の裸を一希に見せることに、別段、特別な感情は持っていないのだろうか。一希だけでなく、他の誰に対しても? その調子でセックスもしてしまうのだろうか。
「でも、本当に気持ちいいのよ。感動で全身が震えるの。そして涙が溢れて止まらなくなるの」
もう智には、理見の言っていることが頭に入らなくなってきた。ただの妄想であってほしい、と秘かに願っていたことの殆どが、次々に理見の発言によって現実化されていく。しかも軽いテンポで次々と飛び出してくる。智は、再び重たい疲労を感じた。本当にそのまま倒れ込みたい気分だった。
理見は、バンダナを外すと頭を振って手で髪をとかし、もう一度それを巻き直した。
「せっかくだから、ボンしない? 約束だったしね」
唐突に理見はそう言った。智は、俯いた顔を勢い良く上げて理見を見た。
「でも、大丈夫なの? 時間あんまりないんでしょう?」
もちろん智は、その問いかけが否定されるのを前提として理見にそう言った。
「お昼過ぎのバスだからまだ大丈夫よ。十時間以上乗らなきゃいけないし、ちょっとキメていかないとしんどいでしょ。私、いつも長距離移動するときは、チャラスを巻いて持っていくわ。そうすればぐっすりと眠れるから」