レイヴ

「それってどんな人? 男? 女?」

理見は、智の方には目を向けずに、ちょっと落胆したように俯きながら歩いている。

「男、なんだけどね……」

全身に軽い衝撃が広がっていくのを智は感じた。半ば予想していた返答ながらいざ実際に聞いてみると、やっぱりそれは智をがっかりさせるのだった。

「会う約束でもしてたの?」

沈んだ声で智はそう聞いた。理見は、智のそんな気持ちの変化など知る由もなく、安易にこう答えた。

「ええ、一応ね。随分前の話になるんだけど、そのパーティーのことは噂で聞いていて、じゃあその辺で落ち合おうかっていうことになってたの。だけど私、ちょっと間に合わなくって行けなかったのよ。南インドのビーチでだらだらしてたら、知らない間に日にちが経っちゃってて……。ハハハ、だからもし智が行ってたらな、と思ったんだけど、駄目ね、私、いつもこうなのよ。まだ大丈夫、まだ大丈夫って思ってると、いつの間にか間に合いそうのないところまで来ちゃってるの。学校行ってた時も、そうやって遅刻ばっかりしていたわ」

そう言いながら理見は自嘲気味に笑った。

「智は、レイヴとかパーティーってよく行くの?」
「そうだね、最近行くようになったかな。最初はインドに対して持ってた反感と同じようなものをやっぱりレイヴにも持っていて、トランスミュージックなんて聴くもんかってずっと思ってたんだけど、初めてゴアでパーティーに行ってハマッちゃったよ。何これ、凄ぇって。それでそのままゴアに三週間ぐらいいたんだ。その時に結構行ってたよ。毎日あったら、ほぼ毎日行ってた。何か、ドキドキするよね。夜中、会場に行く時って。みんなバイク借りてさ。派手な格好して……。プシュカルのもね、ちょうどその時いたんだけど、ちょっと事情があって行けなかったんだ」

智は、再びあの夜のことを思い出した。直規と心路と三人でブラウンシュガーを買いに行った夜……。様々な光景が、懐かしさと共に思い出される。三人で過ごした時間のことを思い、少し胸の熱くなるのを智は感じた。

「そっか、智もゴアにいたんだ。私も去年のクリスマスから一か月ぐらいいたのよ。ひょっとしたらパーティーで会ってたかもね」
「でも、俺が行ってたのは三月の頭ぐらいからだからもうちょっと後だよ。クリスマスから年末にかけてのゴアは凄かったらしいよね。ニューイヤーなんて本当、盛り上がってたって」
「そうね、確かに人は凄く集まってた。宿も全部埋まってて、テント張ってる人達もいたぐらい」
「そんなに人いたんだ。じゃあ俺が行った時は、もうそれの半分ぐらいだったんだね……。理見ちゃんは、やっぱりレイヴとか好きなの?」
「ううん、そうでもないよ。確かにパーティーに行き始めた頃はハマッちゃってバカみたいに行ってたけど、最近はね……。クリスマスに行ってたっていうのも、その人に会うために行ってたようなものだから……。特にレイブに行きたくって行った訳じゃないんだ。まぁ、結局会えなかったんだけどね……」
「その人とはいつ別れたの?」
「半年ぐらい前になるのかな? 別れる時に、ゴアかプシュカルでってことだったんだけど、そんなにはっきり決めてたわけじゃないし、しょうがないんだけどね」 

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