七宝、仏典に示される7つの宝物を指します。
経典によって諸説あり、▼次のようになっています。
「無量寿経」
金・銀・瑠璃(るり)・玻璃(はり)・シャコ・瑪瑙(めのう)・珊瑚(さんご)
「法華経」
金・銀・瑠璃(るり)・シャコ・瑪瑙(めのう)・真珠・まい瑰(まいかい)
この中で瑠璃(るり)はクロマニヨンのアクセサリーでおなじみのラピスラズリです。
瑠璃はラピスラズリのほか、ガラスの古い呼び名でもあります。
この当時のラピスラズリはすべて現在のアフガニスタン産です。
玻璃(はり)は、ガラスや水晶の古い名前で、中国語では現在もガラスは玻璃(ボーリー)と呼びます。
シャコはシャコ貝です。殻の大きさが1mを越すほど成長するものもあります。
有名なボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」でヴィーナスが中に立っているあの2枚貝です。
瑪瑙は水晶などと同じ、石英の一種で縞模様のついているものの総称です。
産出されるその姿が馬の脳に似ていることから名付けられました。
ちょっと気持ちが悪いですね。
瑪瑙はどこでも産出する大変ポピュラーな石で、古くから宝飾品として使われてきました。
珊瑚は真珠と並ぶ海の宝石のひとつで、19世紀末まで珊瑚は地中海産のものしかなく非常に高価なものでした。
したがってこの仏典にも登場する珊瑚は地中海で採られた珊瑚が交易によって運ばれたものです。
しかし19世紀末に日本の近海で良質の珊瑚が取れることが判明。
日本は珊瑚の輸出国となりました。
真珠といえば女性ならば誰でも知っている「ミキモト」が有名ですね。
古くから、真円の真珠は大変価値の高いものだったそうです。
真珠に魅せられたある女性は真珠のネックレスとNYの一等地のビルを交換したそうです。
しかし、真珠の養殖に成功し、真珠王と呼ばれた御木本幸吉の偉業で、庶民にも手の届く宝石となりました。
まい瑰は美石の1種らしいのですが、情報不足でわかりません。
無量寿経の「無量寿」とは「はかりきれない寿命」を表し、無量寿仏とは阿弥陀仏の名号のひとつでもあります。
無量寿経には阿弥陀仏が人々を苦しみから解放し救済するために築き上げた理想の世界、「西方極楽浄土」の様子が描かれています。
けがれや迷いが一切ない、幸福に満ちたこの世界には、七宝でできた樹木、七宝で作られた楼閣、七宝できた水浴場があるとされます。
「ある宝樹はメノウの根、シャコの幹、金の枝、銀の小枝、瑠璃の葉、水晶の花、珊瑚の実でできている。ある宝樹はシャコの根、金の幹、銀の枝、瑠璃の小枝、水晶の葉、珊瑚の花、メノウの実でできている。」
無量寿経(現代語版)
阿弥陀仏の極楽浄土が西方にあるのに対し、東方にあるのは薬師仏が治める「東方浄瑠璃世界」。
瑠璃を大地としたこの世界は、青い光に照らされ、不純なもののまったくない澄み切った清寂と清浄の世界と言われています。
このことから瑠璃=ラピスラズリは七宝の中でも特に重要視されていたことがわかります。
深い青色の中に、星がきらめき、白い雲がたなびくように見えるラピスラズリは、天空を表し、夜明け前の東の空を連想させます。
ラピスラズリを眺めていると、その美しい色合いを理想の世界「浄瑠璃世界」に重ねた古代の人の気持ちがよくわかる気がします。
橘あやり
私事ですが
娘は「水晶」
息子は「蓮」という名です。