新作3品を掲載しました。
今回初めて登場したアンティークビーズのミルフィオーリは実に興味深いストーリーを持っています。
ミルフィオーリというのはイタリア語で千の華を意味します。
その昔、まだガラスが貴重品として装飾品に使われていた頃、イタリアのヴェネツィアはガラスの先進地でした。
ここで作られたガラスビーズは何世紀もの間、世界中へ交易品として運ばれました。
現在、世界中のいたるところで、ヴェネツィア産のビーズが見つかっています。
現代の私たちにとってはガラスは何でもないものですが、自然界に存在する色しか知らない昔の人びとにとって、ガラスビーズの鮮やかな色彩は、驚異の存在だったに違いありません。
ガラスを作り出す技法はどこでもたやすくできるものではなく、知識と技術が必要で、当時は大変貴重なものでした。
13世紀末、ヴェネツィア共和国政府は、東方貿易で莫大な富をもたらしたガラスの技法が外部に漏れることを怖れ、ガラス職人とその家族を一つの島に強制移住させます。
ガラスの技法を門外不出とし、富を独占するためでした。
この禁を破るものは死をもってあがなわれたいいます。
それがガラスの島、「ムラーノ島」です。
ミルフィオーリは、このムラーノ島で作られたヴェネツィアン・ガラスを代表するビーズの一つです。
鮮やかな原色をふんだんに使い、大胆な華の文様を小さな塊に凝縮させたミルフィオーリのビーズは主にアフリカとの交易に使われました。
アフリカの原住民は、これまでに見たことのない生き生きとした色彩に熱狂したに違いありません。
褐色の肌に鮮やかな原色は美しく映えたことでしょう。
アフリカの人々はより色の強いもの、美しいものを競って求め、金や象牙、そして時には奴隷とビーズを交換しました。
アフリカの人々の欲求に応えるべく、ムラーノ島のガラス職人たちは、次々と新しいデザインに挑戦し、ありとあらゆるビーズを産みだしていきます。
こうして無数のビーズが西欧各国からアフリカへ運ばれ、西欧に繁栄をもたらしたのです。
21世紀の現在、アフリカの人々に装飾品として代々使われてきたビーズは、西欧のコレクターたちの目に留まり、今度はアフリカから西欧各国へ逆流するという現象が起きています。
陶器のような質感、歳月を経て深みのある色合いになったミルフィオーリはデザインや希少性によって高い値が付けられ取引されています。