物乞いのいない日本
タイに行くと物質的に日本は恵まれていると強く感じます。
最近いろいろ騒がれていますが、日本には健康保険があり、年金があり、生活保護があり社会保障制度が整っています。
日本では、老人や子供や身障者が道端で物乞いする風景は見たことがありません。
学校を卒業すれば、必ず何かしらかの仕事に就くことができ、生活に困窮することもほとんどありません。
しかしタイでは日本のような社会保障制度はありません。
都会の道端では腰の曲がった老人が物乞いをし、4、5歳の子供が裸足で空のビニールコップを差し出して来ます。
下をよく注意していないと手足のない身障者の物乞いを踏んづけてしまいそうになることもあります。
東北部の農村は非常に貧しく、中学校にさえ行けない子供もいます。
タンブンが社会保障制度の代わりになっている
タイにはタンブンの考え方があります。
タンブンとは喜捨寄進をすることで善行を積み重ねることです。
恵まれないものを援助することもタンブンです。
物乞いの前を通り過ぎていく人の中には立ち止まって小銭を入れていく人が何人かいます。
時には労働者の1日分の賃金より多いのではないかと思われることもあるくらいです。
あきらかに物乞いとわかる格好でバスや列車に乗ると車掌は運賃を要求することはありません。
タイではタンブンが社会保障制度の代わりになっているとも言えるかもしれません。
タイの格差社会
最近、日本が「格差社会」になってきたとニュースになることがあります。
確かにそうかもしれませんが、タイに比べればはるかに「平等社会」です。
タイには相続税、贈与税がありません。
子供は親から財産をそっくりそのまま受け継ぎます。
親が金持ちなら子供は金持ち。そしてその子供も金持ちなのです。
何も努力することなく、ただ金持ちの家に産まれたというだけで半永久的に金持ちなのです。
相続税には賛否両論ありますが、相続税の存在しない国は、貧富の差の拡大と貧富の固定化を招きます。
政治家を例に挙げるとタイの閣僚の一人当たりの平均資産は約6.6億円です。タクシン政権の頃の平均は約23億円でした。
反対にタイでいちばん貧しいと言われる東北部の農村の年間平均収入は3.7万円程です。
激しい「格差社会」です。
ちなみに福田政権の閣僚の一人当たりの平均資産は1億1695万円です。
家族の絆
タイの農村では家族、親戚が支えあって暮らしています。
農作業ができれば食べていくだけなら困ることはありません。
しかし、日本のような年金制度がないので、親が歳を取って農作業ができなくなれば子供が面倒を見なければなりません。
もしも老親が病気にでもなれば健康保険がないため高額の医療費がかかります。
生活保護がないので、どんなに困窮しても家族で何とかするしかありません。
そこで娘は家族を支えるため、都会に働きに出ます。
学がない田舎の娘を雇ってくれるのは水商売で体を売る仕事くらいです。
老親の薬代のため、小さな弟妹を学校に行かせるため娘は毎月せっせと送金します。
娘は親に心配をかけないため仕事の内容については話はしません。
親も若い娘が大金を送金できる仕事についてわかっていますが知らないふりをします。
まるで江戸時代、遊郭に身売りされた東北地方の昔話のようです。
子は親に献身的に尽くすのが子の義務と考え、親は子の援助を当然と考え、子の仕送りに依存します。
娘たちの将来の夢が「親に家を買ってあげる」というのだから泣かせます。
祖父母、両親、兄弟の生活が彼女にかかっているのです。
家族の絆は日本と比べて極めて強固です。
社会保障制度がないゆえ、家族で助け合わなければならないからかもしれません。
先進国では相続税を廃止する国が増えてきていますが、タイでは現在相続税の導入が検討されています。
ただ相続税の導入を決めるのは相続税の対象となる政治家です。
自分の資産を減らすような改正をするのか疑問が残るところです。
sach
「闇の子供たち」を観てからタイについて色々と調べ始めました。
なぜこんなに格差があるのか?という疑問から先に進めなかったのですが、…とても理解ができました。
力の弱い人たち(子供、老人、障害者、貧しい農村の人)が少しでも安心して暮らせる国になってほしいと思います…
miki
的を射た内容で、大変参考になりました。
タイの格差社会は今後、ますます広がっていくのでしょうか・・・・。