善行の貯金
仕事のためタイへは年に5,6回訪れます。
タイ語を学び、言葉が判るようになってタイの社会、タイ人の考え方に関心を持つようになりました。
タイ人はほとんどが敬虔な仏教徒で信心深いです。
祠の前を通り過ぎるときは手を合わせながら通り過ぎて行きます。
どこにでもあるお寺はにぎやかで、日本のように閑散としていることはあまりありません。
タイ人の暮らしに欠かせないものにタンブンというものがあります。
タンブンとは徳を積むことです。
具体的には、お寺に寄進したり、托鉢する僧侶に施しを与えり、恵まれないものを援助することです。
喜捨寄進をすることで善行を積み重ね、より良き来世を迎えることを期待します。
これは肉体は滅んでも霊魂は永遠に消えず、再びこの世に生まれ変わるという輪廻転生の考えた方に基づいています。
現世で降りかかるあらゆる事象は前世での行いに左右されると考えます。
現世での幸福は前世でのタンブンの結果であり、現世でタンブンを怠り悪行を行うと来世は不幸になるばかりか転生先は獣へ落とされます。
タンブンを善行の貯金と考えるとわかりやすいかもしれません。
タイ人は頻繁にタンブンをします。
まるでスーパーへ買い物へ行くような感じで、お寺へタンブンをしに行きます。
タイの友人は「苦しいとき、つらいときはタンブンしなさい。きっと楽(サバーイチャイ)になるよ」とよく言います。
私が落ち込んでいたりするとお寺に連れて行ってくれます。
お寺に寄進するタンブンの金額はまちまちですが、300~500バーツほどは使います。
タイでラーメン1杯は20バーツ。単純に20バーツ=500円とし、円で考えると大体7500~12500円くらいでしょうか。
決して安くはない金額です。
タイにはたくさんの物乞いがいます。
物乞いに喜捨することもタンブンの一つです。
タイでは物乞いはお金を入れてもらうと合掌することもありますが、インドやイスラムではもらって当然というようなぞんざいな態度をします。
施しをすることで徳を積むのは喜捨した当人で、物乞いは施しした者が徳を積む手助けをしているからです。
感謝すべきなのは施しを受けた側ではなく施しをした側なのです。
私たち日本人は人から何かを与えられたときに「ありがとう」と感謝の気持ちを示すように教えられてきました。
私たちにとってこの考え方は奇異に見えるかもしれません。
「情けは人の為ならず」
「情けは人の為ならず」ということわざがあります。
人に情けをかければ、それはめぐりめぐっていつか自分に返ってくる。だから人に親切にしなさいという意味です。
このことわざがタンブンの考え方に近いのかもしれません。
人に何かをしてあげて救われるのは実は自分であるということです。
人の役に立っていると感じることで充足感を感じるのは自分自身なのです。
タンブンの考え方を知って以来、毎年必ずタンブンすることにしています。
ただしタンブンする場所は日本ではお寺ではありません^^;