夜、バンコクの繁華街を歩いている、映画の広告が目に入りました。
「The Matrix Reloaded」
そう、あの「マトリックス」の続編です。
日本よりも早く公開されていたのです。
これはチャンスと、映画館の門をくぐりました。
「席はどこがいいですか?」
そう尋ねられ、適当に劇場の半ばあたりを指しました。
開館時間になり入場すると1000人以上は入るだろうと思われるほどの大きな劇場に観客はまばら。
数えられるほどしか入っていません。
いちばん遅い上映時間のためかもしれませんが、日本では大人気の映画がちょっと意外でした。
選んだ座席は思ったより前の方だったようで、私より前に観客はひとりもいません。
近日公開の映画予告が始まり、何本かが終わったあと、プミポン国王の写真とともに「国王陛下に敬意を表しましょう」という英語のメッセージが流れました。
次に国歌が流れ始めたのですが、何か背後から感じるものがあります。
振り返ると、観客全員が直立していました。
ハッと気がついて、慌てて立ち上がりました。
バンコクでは夕方6時になると、国歌が流れはじめ、国歌が流れている間は道行く人はみな動くのを止め、直立不動の体制をとります。
マーケットのようなにぎやかな場所でこの時間を迎えると、いっせいに動きがとまり、まるで時間がとまってしまったかのように見えます。
すぐにこれを思い出しました。
運悪く私より前に観客がいなかったため、映画が上映される前には立ち上がらなければならないことにまったく気がつきませんでした。
今回の件でひとつ学びました。
視線は感じられるものなんだということです。
「見るんじゃない。感じるんだ」と言ったブルース・リーの言葉を思い出しました。