ぼくはロックンロールが大好きで、
はかなく散っていったロックンローラーたちは、
こんなぼくをいつも慰めてくれた。
“ハニー、ベイビー、涙を拭いて、あなたは間違っちゃいないわ”
酒や、ドラッグでぼろぼろの嗄れ声で、
落ち込んだこのぼくをいつも慰めてくれた。
ロックがなかったら、ぼくは生きてこれなかったかもしれない。
ジム・モリソン、っていうのは、
ドアーズというバンドのカリスマ的なボーカリスト。
六十年代後半にカリフォルニアで生まれたバンドだ。
当時のヒッピームーブメントに乗っかって、数々のヒッピー達や反体制的な若者たちに愛された。
しかし、バンド自体の命は短命で、ヒッピームーブメントの終演
とともに三年かそこらで消えていった。
ジム・モリソンはドラッグに溺れて、パリで死んだ。
孤独という死に神に取り憑かれて死んだ。
ブルースという青い悪魔に見入られて逃れられず、
夢の世界に溺れて死んだ。溺死、だ。
ぼくはパリにある彼のお墓にお参りに行った。
ちょっとだけ彼と二人きりになれたような気がして、
ドキドキした。
“BREAK ON THROUGH TO THE OTHERSIDE”
彼は向こうの世界に行けたのだろうか?
その壁を突き抜けて?
何の束縛もない自由な世界に?
色とりどりの花々の咲き乱れる、キラキラした世界に?
極彩色の蝶々みたいに散っていった。
あらゆる快楽に溺れ、スピードに乗って人生を消化した。
カッコイイ生き方? 寂しい死に方?
彼は不幸だったと思う。
決して満たされてはいなかったと思う。
ひょっとしたら、満たされている、という感覚を一生理解できずに死んだのかもしれない。
とても不幸な死に方だ。
全ての自殺者達に共通する、最も不幸な死に方だ。
彼らは音楽に情熱を傾けた。自分の欠落した感情を、
胸の奥から絞り出されるような魂の叫びをぶつけるために、
ぶちまけるために、歌を歌った。演奏した。
震えるようなその叫びは、ぼくの胸を揺さぶった。
ぼくの魂をわしづかみにした。
知らない世界を見せてくれた。
見えない世界のあることを教えてくれた。
向こう側の世界、のことについて教えてくれた。
ぼくは彼を愛している。
彼の叫びを愛している。彼の言葉を愛している。
?知覚の扉を開くとき、万物はあなたに語りかける。
無限に広がる永遠性のあることに、
あなたは気が付くことだろう。
向こうの世界へ突き抜けよう、向こうの世界へ突き抜けよう、
目の前の壁を打ち壊し、向こうの世界へ突き抜けよう?