智は、幸恵の首筋の味を思い返した。幸恵の匂いと肉の味……。そしてゆっくりと、手をまわして幸恵を抱き締める動作をする。唇を押し付け、狂おしく舌を吸う。幸恵は、苦しそうな吐息を洩らす。最早智の下半身は燃えるように熱くなっていた。いても立ってもいられず、勢いよくスカートを下ろすと下着を剥ぎ取り、幸恵の肉の中に自分の熱い固まりを突き刺した。足を広げ、十分に潤った柔らかい壷の中へ火照った肉体を埋め込んでいく。目を閉じ、小声で幸恵の名を呼びながら、激しく体を揺さぶる。下半身から、全身を麻痺させるような湿った感覚が身を貫く。それは打ち寄せる波のように何度も何度も智を襲う。智は、温かい幸恵の肉に全身を泳がせた。幸恵は、智に身を任せ、体を貫かれるその度に苦悶の表情で呻き声をあげる。智は、幸恵の全身を味わい尽くしあらん限りの力を振り絞って、幸恵の中へ放出した。全てを出し尽くしてもなお、何度も何度も貫き続け、最後の一滴までをも幸恵の中に絞り出した。智は、荒々しく肩で息をしながらうつ伏せのまま横たわった……。
一体どれぐらいそうしていたのだろう、急に腹の辺りに冷たい感覚を覚え、智は、ふと目を覚ました。気が付くと右手はしっかりと下半身を握ったままになっており、ベッドのシーツは大量の粘液で汚されていた。智は、思わず、うわっ、と叫んで飛び上がった。そして先程自分が行った一部始終を鮮明に思い返した。
智は、ほとほと自分自身が嫌になった。あれだけ反省したはずなのに、再び幸恵を陵辱した。一体、俺は何なんだ? 幸恵に謝ったあの言葉は全部嘘だったのか? いまだにこんなにも強烈に欲望が燃えている……。智は、ペニスを切り落としたい衝動に駆られた。もしも、幸恵が再びここに来ていたとしたら、俺は全く同じことをしていたのではないだろうか……。智は壁に拳を打ちつけた。拳は、鈍い音を立てて血を滲ませる。智は、しばらくの間拳から滲んだ血を眺めていたが、すごすごと立ち上がると、汚れた下半身やベッドのシーツを掃除し始めた。そうしているととても情けない気分になってきて、自然と涙が溢れ出してきた。止めようと思っても次から次へと流れ落ちるので、もう諦めて、枕に顔を押し付けて思う存分声を張り上げて泣いた。泣いている内にもう何が何だか分からなくなって、そのまま気を失うように眠ってしまった。
次の日の朝、目を覚ましても状況は何も変わっていなかった。眠る前と全く同じで、枕は涙や鼻汁で汚れ、シーツには精液の染みが残ったままだった。智自身はといえば、下着がずり落ちて臀部が丸出しになっており、智は、慌てて下着とジーンズを引き上げた。
もう夕方になっているようだった。部屋の中をよく見渡してみる。もちろん部屋の中には誰もおらず、外へ出てみても知り合いは誰もいない。
――― 知っているといえば、タンクトップと角刈りの二人ぐらいか…… ―――
智は、一人、苦笑した。
――― 俺が知っているのは、あんな奴らだけなのか…… ―――
もう、できることなら、あの二人とはこれ以上関わり合いたくはなかった。ああいう人間と一緒にいるのが智にとって一番体力を消耗する。