「何かって……、ドラッグのことですか?」
「ああ」
「やってるって言ったら、今吸ってるこのチャラスと、後は、アシッドぐらいだと思うんですけど……」
「違うよ。もっと他のもの」
「後は……」
智はためらいながら答えた。
「ブラウンを…少し……」
建は、やっぱりかというような表情で智を見た。
「それだよ、智。ブラウンだよ。禁断症状だ」
智は驚いて建を見た。
「えっ、禁断症状? だってそんなに言う程やってないですよ」
「どれぐらいやったんだ?」
建は尋ねた。
「どれぐらいって……、一ヶ月前ぐらいに手に入れて……、実際やり続けたのは二週間ぐらいだと思いますけど……」
「それぐらいやれば十分だよ。気付いていなかっただけで、実際はもっと早くから出てたんだよ、きっと。二三回やれば禁断症状なんてすぐ出るもんなんだぜ」
智は、背筋が寒くなる思いをした。禁断症状なんて考えてもみなかった。自分とは無関係のものだと思っていた。
「そうなんですか……。禁断症状が……」
「ああ。まだそんなにひどいものじゃないだろうけど、やればやる程体に耐性ができてきて量もだんだん増えて行くから、禁断症状もひどくなる。最初の頃に比べたら一回にやる量が増えてきただろ?」
「はい。確かに増えました。最初の頃は恐る恐るやってたんですけど、最近はもう気楽にやるようになってます」
「それがどんどんエスカレートして行くと、ブラウンなしじゃ耐えられない体になっていくんだよ。それは肉体的に依存しているものだから、自分ではコントロールできないものなんだ。体が勝手に求めるんだよ。俺がシャブにハマッてた時は、相当ひどかったからな」「建さんは、ブラウンとかヘロインとか、やったことあるんですか?」
「ああ。タイにいた時に、一ヶ月ぐらい部屋に籠りっきりでずっとやってたよ。しばらくしたら激しい禁断症状が出てきて、シャブやってたドロドロの頃のこと思い出して嫌になって止めたよ」
「タイですか……。やっぱ、タイのやつは凄いんですか?」
「ああ、凄く強力だった。鼻から吸うと顔が痺れて動かなくなるぐらい。右の鼻から吸ったら、右半分だけ動かなくなるんだぜ。初めてやった時は、そのままぶっ倒れて失神するかと思ったよ」
「そんなに、ですか……。俺、どうなりますかね? このままやってたら建さんみたいになるんですかね」