ジョージは、皆とは違ったやり方で片手でチラムを掴んだ。親指と人差し指、中指の三本でチラムの口を持ち、中指と薬指の間でチラムの胴を挟む。中身が落ちないように自然と顔は上向きになる。そして空いた手で器用にマッチを擦ると、自分でチラムに火をつけた。途切れるような吸気音が何回か続き、そしてその度に、白い煙が筋のようになって勢いよく何度も吐き出された。しばらくそうしていると、しまいには煙が出なくなって、ジョージの空気を吸い込む音だけが部屋に響いた。ジョージは、口から手を放し、片目をつぶってチラムの中を覗き込んだ。
「アー、アオ、アオ、イッツ、フィニッシュ……」
ジョージが笑いながらそう言うと、谷部は、オーライ、オーライ、ノー・プロブレム、と言ってジョージの手からチラムを受け取った。そしてそれを逆さにし、ポンッと叩いて、中の円錐形の石と灰を取り除いた。そして新たにチャラスを補充して、ほら、キミコ、と谷部の隣に座る女に手渡した。キミコと呼ばれたその女は、谷部の顔を見ながら微笑んで、ありがとう、とそれを受け取る。そしてジョージと同じやり方でチラムを掴むと、谷部がそれに点火した。君子はゆっくりと煙を吸い込んだ後、少しむせながら谷部にチラムを手渡した。谷部がそれを受け取る頃にはもう既に建がマッチを擦っており、建は、谷部が構えるのを待った。谷部は、うやうやしくマントラを唱えると、チラムに口を添えた。建は、谷部がそうするのを見計らい、同じようにマントラを唱えると、ゆっくりとマッチの炎を近づけた。炎は、谷部の呼吸に合わせてチラムの内部へと吸い込まれていく。そしてそれが消えそうになると、建が上手く距離を作って消えないように調節する。部屋の中は再び煙で真っ白になった。
しばらく無言のまま時が過ぎていった。その沈黙を破って最初に口を開いたのはジョージだった。
「部屋に帰るよ」
ジョージは谷部に言った。
「どうしたんだ? もっとゆっくりしていけばいいじゃないか、なあ?」
谷部は、智に同意を求めるように英語でそう言った。智は無言で数回頷いた。するとジョージは、柔らかく微笑んで、いや、いいんだ、明日早いし今日はゆっくり眠ることにするよ、と言った。
「気を遣わなくたっていいんだぜ」
谷部が言った。
「違うんだ、そんなんじゃない。ちょっと疲れてるし、今日は早く寝ようと思っただけなんだ。君達はゆっくり楽しんでくれよ」
ジョージは、そう言うと、ピンポン球大のチャラスの固まりをもう一つ谷部に手渡した。
「何だよ、これ」
「みんなで使ってくれよ」
谷部は、金を払おうと財布を取り出すと、ジョージが慌ててそれを遮った。
「違うんだ、ヤベ、お金なんていらないよ、みんなでやってくれよ」